被引用特許をつかった企業のマクロ分析  H19.6.8

 米国特許を対象に特許の質などをマクロに比較する場合、IPC別の件数と被引用特許件数の利用の実例をご紹介します。
 例として、韓国の三星電子(Samsung Electronics)とソニーを下記2つの観点で分析しました。なお、被引用分析については、これまでもいくつか(1121029894、)紹介しています。
  1.IPC別の件数の分析
  2.各社の特許の6年目の被引用状況
 
1.IPC別の件数の分析

 まず最初に、全体の概略を把握するためにIPCのサブクラス(A01Bなど4桁)ごとの件数を集計することにしました。

(1)分析のためのIPCのサブクラスの表の作成
 IPCのサブクラスごとの集計表を準備する必要があります。そこで、IPCの参照、検索システムであるWebIPC8を使い、その左に表示されているサブクラスをコピーしてExcelに貼り付け、集計表を作成しました。下図は、IPCのAセクションのサブクラスをコピーしているところです。


 次にExcelに貼り付ければいいのですが、上記データにはハイパーリンクが付いていて邪魔になるので、取り外して貼り付けました。
 ハイパーリンクの取り外し方;マイクロソフトの「メモ帳」などのエディターに貼り付けることにより外れますので、それを再度コピーして、Excelに貼り付ければ、完了です。
 下記はHセクションの実例です。


 最終的に下記のような集計表を作成しました。


 次にPatentWeb/PatSearch Fulltextで、出願人=Samsung Electronic* の検索を行ない、その番号、題名出力の画面にて、IPCでソートします。


 下図はIPCでソートしたものです。これを数えていけばIPCサブクラスごとの件数が集計できます。ただし、50件ずつしか表示されませんので何かと面倒であり、間違いの元になります。


 上記を「Create Report - Lsit」機能を適用すると下図のように592件全体のリストが表示されます。そこで、赤枠で囲ったようなIPCサブグループごとの件数を数えて、上記の集計表に記入していきます。大量に処理する場合はExcelに取り込んで自動処理させる方法もいいでしょうが、それほど多くないのであれば、IPCサブグループの集合ができていますので、数えるのが簡単です。
※件数の多い場合にはExcelのピボットテーブルを利用して簡単に集計することもできます。116で詳細を説明します。


 
2.各社の特許の6年目の被引用状況

 1997年登録の各社の特許が、2002年のUSPの何件に引用されているか、また2001年登録の各社の特許が2006年に何件引用されているか調べます。
 まず、Samsung社の1997年登録特許を検索しますが、意匠や再発行特許を除くために[Patent/Publication No.: ]ラインに「not (USD or USRE or USPP or USH)」を入力しました。※1.で説明したIPCごとの件数にもこの式を入れた方がいいかもしれません。


 回答に「Create Report - Lsit」機能を適用して下記のリストを作成します。



 次に、この特許番号だけを抽出して、「Patent Cited」欄に入力します。特許番号だけを抽出する方法が簡単ではありませんが、ここでは「SGshot」を利用する方法で説明します。 ※SGshotは、中央光学出版で販売しているPatentWeb出力の加工ソフトです。
なお、特許番号だけの抽出は、Worksheetを利用する方法もあります。

 まず全部を選択してコピーします。


 SGshotを立ち上げて[CB/OK]をクリックします。これはクリップボードにあるデータを処理するモードのスタートです。次に「3.被引用特許分析」を選択します。


 SGshotの機能により番号だけが抽出されますので、ここで右下の[番号コピー]をクリックします。


 次にPatentWebにもどり、特許発行日を2002年とし、引用特許[Patent Cited]欄に上記でコピーした特許番号を貼り付け、検索を実行します。[Patent Cited]欄には32KBまで入りますので、約2,400件くらいの特許番号まで入力可能です。もし、2,400件以上になった場合には分けて入力し、合計することもできます。


 検索が終わると下記のように検索式に使った番号が全件表示され、その下に被引用件数(この場合は631件)が表示されます。



 これを繰り返して、下のように調べることができました。

1997年の
 特許
1997年特許の
2002USPへの引用
1件あたり
の被引用
2001年の
特許
2001年特許の
2006年USPへの引用
1件あたり
の被引用
三星電子 585件 631回 1.08 1442 1643 1.14
ソニー 868 843 0.97 1397 1675 1.20

 このデータから見る限り、三星電子もソニーも昔よりも最近の方が被引用が多くなった(他社より先行しているものが多くなった)と言えるようです。特にソニーは改善率が大きいと言えます。

 ごく大まかには上のような見方ができますが、細かく見るといろんな見方ができます。例えば、特許件数の多い分野の出願の割合が多くなると、引用される割合も高くなりますので、出願分野(≒事業分野)の変化を表しているのかもしれません。また、上の表は出願後6年目の被引用だけを見ていますが、出願後3,4件目には多く引用されるが10年目ころになると引用が非常に少なくなるものとか、逆に引用が長い間継続するものがありますので、時間的な要素を入れるとまた違った結果になることもあります。