被引用特許の分析  H17.7.25

 PatentWebでは明細書の表示などにおいて、その特許を特許庁の審査で引用している特許を見ることができます。これらの利用はすでにご紹介してありますが、今回はPatentWebのデータを加工する専用のソフト・SGshotを使った分析をご紹介します。(SGshotは中央光学出版から発売されているPatentWeb用の情報加工ソフトです。ご関心のある方は⇒tokyo-sales@cks.co.jp

各社の延べ被引用件数を調査し、1件当たりの被引用件数を算出しました。対象はIBM社と日本のいくつかのエレクトロニクス関連企業の1994年〜1998年までの登録特許です。被引用件数の多い特許は影響を多く与えた特許であり、重要な特許とみられています。
(なお被引用件数は月日がたつにしたがって多くなりますので、後日調査すれば件数が多くなっているものと思われます。) 
 ※特許の重要性は様々な観点での産業への貢献によって決まる
  ものであり、審査引用だけで決まるものではありません。
  しかし、審査で引用特許にするかどうかは技術的な観点で審
  査官が決めるものであり、出願人の意思で増減することはで
  きません。したがって客観的な評価として優れています。


1件当たりの被引用件数は以下のとおりです。(年が新しくなるにしたがって件数が減っていますが、これは登録年から現在までの期間が短くなるためです。)                        
     発行年
出願人
1994年 1995年 1996年 1997年 1998年
IBM 23.0  21.6 19.8 16.2 13.3
キヤノン 11.3  10.3 9.0 8.3 6.9
東芝11.8  12.1 11.8 11.4 9.1
日立製作所14.2  13.0 11.9 11.1 9.6
日本電気11.8  11.3 10.0 9.7 7.4
松下電器11.6  10.4 10.7 8.7 7.7
ソニー11.2  11.9 11.5 8.7 7.4
富士通13.4  11.9 12.1 9.6 8.5
IBMの特許は継続して非常に多く引用されています。(ただし、IBMの特許でも1回も引用されない特許も結構あります。)
次いで多いのは、日立製作所の特許であり、東芝や富士通の特許も比較的多く引用されています。
(以上の被引用件数は企業全体での値です。これを技術分野別に見れば、それぞれの分野での状況を見ることができます。)

上表の基礎データ(登録件数と延べ被引用件数)※順序は1994年登録件数の順 
  1994年 1995年 1996年  1997  1998
登録件数 延べ被引用件数 登録件数 延べ被引用件数 登録件数 延べ被引用件数 登録件数 延べ被引用件数 登録件数 延べ被引用件数
IBM 1,307 30,029 1,387 29,958 1,881 37,282 1,743 28,208 2,681 35713
キヤノン 1,120 12,680 1,108 11,416 1,589 14,338 1,415 11,713 1,966 13,661
東芝 1,033 12,189 1,022 12,378 968 11,437 937 10,715 1,271 11,618
日立製作所 1,002 14,199 930 12,073 983 11,720 926 10,272 1,113 10,665
日本電気 930 11,002 1,043 11,768 1,082 10,773 1,132 10,971 1,691 12,580
松下電器 837 9,676 912 9,515 910 9,759 800 6,973 1,120 8,645
ソニー 725 8,120 837 9,978 884 10,140 881 7,691 1,340 9,909
富士通 610 8,152 741 8.790 895 10,792 921 8,806 1,226 10,392


このような分析のやり方を以下にご紹介します。
1995年登録の米国特許(USP)を対象に、いくつかの出願人の特許の被引用特許の状況を調べてみました。
まず、IBM社の特許の被引用特許を調べてみます。

 検索画面は以下のとおりです。出願人名をinternational busines* machin*としているのは、漏れを減らすためです。検索してみます。また、特許番号で not USD としていますが、これで意匠(デザイン特許)を除くことができます。


1,387件あったと回答されました。


をクリックして全件にチェックし、次に Create Report - List を選択し[Go]をクリックします。


1,387件の特許番号がリストアップされました。


第1の分析・・・ここでSGshotを立ち上げて、被引用回数の多い特許を探すことにします。
 (以下の詳細なやり方は SGshot の利用案内をご覧ください。)

上記のリストの全体を(ソース表示しないで)そのままコピーします。
  ※なお、件数がこのように多い場合はパソコンのメモリ容量など
   都合で、数百件以上では処理できなくなることがあります。
   そのような際には、数百件ずつに分割して実施し、後で合わせ
   ることで行えます。



SGshotを立ち上げ、[CB/OK]をクリックします。
(SGshotはPatentWebの出力を加工するソフトです。⇒中央光学出版;tokyo-sales@cks.co.jp


業務選択画面で[3.USP引用分析を(Patent Web)]をクリックします。
※[引用分析-被引用件数のみ/即実行]をクリックすると、いくつかのステップを省略して簡単に行うことができます。


下は分析の準備ができたところです。「□引用回数のみ」をチェックします。


分析が完了すると下図のように、1,387件が被引用回数の多い順に表示されます。

1995年から現在までの10年間に200回以上も引用されている特許があります。また100回以上の特許が30件近くあります。
他の特許にこれほどの影響を与えた特許は、一般に優れた特許といえます。

  (中略)


最後に延べ被引用件数(合計の被引用件数)が出ています。これを特許件数で割ると1件当たりの平均の引用件数が出ます。上記の被引用件数ファイル⇒IBM95all.csv 
 29958/1387=21.6(件/件)

日本の各社の特許も同様のやり方で算出し、先頭部分の結果を得ました。

各社の特許ごとの被引用件数ファイル;
 Hitachi95all.csv Toshiba95all.csv Fujitsu95all.csv 
 Sony95all.csv NEC95all.csv Canon95all.csv

※これ以外の分析データを必要とされる方はメールにてご連絡ください。
 メールあて先 mpfanj@mail.goo.ne.jp

所要時間;SGshotによる分析は、調査する特許の1件当たり0.5〜0.8秒で実施できました。つまり、1,200件を処理すると約10分(〜15分)かかりました。ネットワークやPatentWebの混雑の程度により所要時間は異なるようです。検索や番号をコピーするまでの手順もありますので、これだけ全件を行うにはだいぶ時間がかかりました。
費用;トップス契約であったので、まったく追加料金なしで行えました。

以上が、被引用件数の表を作成するやり方です。


紛らわしい表現・・・引用特許と被引用特許

(昔)----A特許発行-------B特許審査-----→(新しい)
              A特許を引用

●B特許の審査ですでに発行されていたA特許を引用している場合,A特許が引用されているとも言います。

●A特許を中心にすると,B特許は被引用特許です。

●B特許を中心にすると,A特許は引用特許です。

参考; 243回も引用されている US5386567 を番号指定でPatentWebで検索して明細書を表示してみると下のように、この特許の審査に使った引用は5件ですが、引用された特許(被引用特許)は243件と表示されています。
  


次に、最初の被引用件数の表とは異なりますが、別の分析をしてみます。

第2の分析・・・上の明細書データにSGshotを適用すると下記のように、この特許を引用している243件の特許を分析してくれます。横軸はそれらの特許の発行年、縦軸はそれらの特許の権利者(出願人)であり、引用特許件数の多い順に並べてくれます。(この分析の全データ・CTUS5386567.htm
・Micron社の特許に最も多く引用されていることがわかります。Micron社の2000年、2001年の特許に大量に引用され、その後も少しずつ引用が続いています。
・次に引用特許が多いのはシスコ社であり、同様に2000年、2001年、およびその後の特許に引用されています。
・3番目に多いのはIBM社の自社特許ですが、それほど引用されていません。
・Intel社の特許では1997年がピークになっています。

 この状況を見ると、IBMが最初に研究し特許を出願したが、Intelが早期に重要性に気づき大量出願し、IBMも少し遅れて研究を開始した。続いて、シスコが、またマイクロンが出遅れたことに気づき、類似の製品化に向けた特許を大量に出願した、というように読むことができます。



ご参考;この特許の米国での出願日は1992.10.14であり、日本では 特開平5-265927 として公開されています。
題名;コンピュータならびにそのシステム再構成化装置および方法
この発明はパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータ・システムに関し、とくにシステム稼働状態においてもアダプタ類を着脱でき、しかもアダプタ類の着脱に応じたシステム構成の再構成化を自動的に行えるコンピュータ・システムを提供することを目的としている。
 いわゆるUSBインターフェースのためのシステムと思われます。基本特許かどうかまでは分かりませんが、確かに有益な特許のように思われます。

2番目に被引用回数の多い特許の詳細を分析したいと思います。
今度は上のやり方とちょっと違えてみます。SGshotに直接上記の特許番号を入力し、引用特許マップを作成してみます。(キーボードから入力してもいいのですが、下のようにコピーして貼り付けも可能です)


[CB/OK]をクリックします。


業務選択画面で[3.USP引用分析を(Patent Web)]をクリックします。


コピーしておいた特許が「対象特許」欄に表示されていますので、「処理の選択」などを確認して[OK]をクリックします。今度は「○HTML形式/明細書リンク」をクリックして選択します。


下記は、SGshotがPatentWebにつながってデータを入手しているところです。


分析途中で似た出願人を同じと見なすかどうかSGshotから聞いてきますので、指示してください。
以下の例は、別会社なのでその旨、指示します。


この特許は、マイクロン社に継続して引用されています。2003年登録の特許が最も多くなっています。また、2番目以降のアプライドマテリアル社、LAM、ニコンの特許は1998年登録から継続して引用され、2003年の特許に多く引用されています。(この実際のデータ・CT5433651.htm


この特許も日本に対応特許があります。特開平7-235520、題名;研磨過程モニタ装置及びそのモニタ方法、VLSI配線技術で、基板上の表面形状を滑らかにするために研磨する半導体製造装置。

特許番号からその内容を見る・・・3番目以降の6件をまとめて、どのような内容かPatentWebから抄録を入手します。まず、Excelでコピーします。


SGshotを立ち上げ、[CB/OK]をクリックします。


以後、使い方の詳細はSGshotの案内をご覧ください。

抄録作成が済むと下のように表示されます。