重要特許の被引用回数 H18.3.10

 重要特許は被引用回数が多いと、以前から言われています。それを前提として、いろんな分析手法が紹介されています。

 しかし、どの程度それが本当であるのか、いま一つよく分かりませんでした。USP(米国特許)を対象として、重要特許の被引用回数に関して「情報の科学と技術、2006.3月号」(社団法人 情報科学技術協会)に記事が出ています。
 この記事では、実際に重要と言われる特許の被引用件数が多いことが示され、それに続いて、さまざまな観点で分析がされています。

 世の中で重要と言われている特許について、その被引用回数をPatentWebで調べてみました。

事例T. 青色レーザ特許

 話題を集めた日亜化学の青色レーザの特許(特許2628404号)のUSPの被引用状況を調べてみました。
出願番号は特願平2-288665です。(特開平04-164895
まずPriority 欄に[JP 2-288665]と入力して、対応するUSPを検索しました。JPと年との間には半角スペースが必要です。

 下図のように、2件該当のあることが分かりました。



 この一件目をの番号をクリックして明細書を表示させると、書誌的事項の最後の付近にPatents Citing This One(36)として、36回の引用されていること(被引用)が表示されています。



 この出力を見ると、どのような会社から後願の特許が出ているか、つまりどこが類似の研究をしているのか、よく分かります。

 さらに、中央光学出版から市販されているSGshotを使うと下記のようなマップ状に展開した形で入手でき、出願人−登録年の両方で見ることができます。
(SGshotの利用は必須ではありません。より便利な方法として紹介しています。)
このFCAマップを見ると、1998年登録において、三菱電機、ノースウエスタン大学、住友電工の特許に引用されていることが分かります。しかし、これらの会社はその後まったく引用特許がありませんから、関連特許が継続してはいないようです。

 これに対し、2002年から Technology and Devices社、Cree社、さらに2004年からKopin社の特許に、連続して引用されています。


  ※この実際のデータはここをクリックすると見られます。
 Kopin社の特許番号 US6734091 をクリックすると、USPTOにつながってその内容をワンタッチで見ることができます。


 その下の方には、背景説明の部分に、GaNによる青色発光ダイオードに関するものであることが書かれています。
BACKGROUND OF THE INVENTION
Recently, much attention has been focused on GaN-based compound semiconductors
(e.g., In.sub.x Al.sub.y Ga.sub.1-x-y N, wherein x+y.ltoreq.1,0.ltoreq.x.ltoreq.1,
and 0.ltoreq.y.ltoreq.1) for blue, green, and ultraviolet light emitting diode
(LED) applications. One important reason is that GaN-based LEDs have been found
to exhibit efficient light emission at room temperature.


 また、2件目の特許も同様なやり方で被引用回数は34回であることが分かりました。
また、下記のようにFCAマップにしてみると、Kopin社とCree社が継続していることが分かります。


 ところで、この36回とか34回の被引用回数は多いのか少ないのか知りたいものです。
この2件(US5334277、US5433169)は1994年,95年の登録です。

 そこで下図のように、PatentWebの特許番号欄に1994年登録のUS5433150〜159までの10件を入力してそれらの被引用回数を調べてみます。


 下図のように、回答リストを一件ずつクリックし、スクロールして見ていくと、被引用件数を知ることができます。


  

 この方法はPatentWebが使える人は誰でもできますが、件数が多くなると、クリックして見るのも、記録するのも面倒になります。

 このとき、SGshotを利用すると、もっと簡単にやれます。
(SGshotの利用は必須ではありません。より便利な方法として紹介しています。)
まず、「3.被引用特許分析」を選択します。


 番号を入力して「◎被引用件数」を選択し、「OK」をクリックします。


 後は、SGshotが自動的にPatentWebにつながり、10件の調査を行い、終了すると下の表のようにまとめてくれます。表は番号順と、被引用回数の多い順の両方が作られます。下表は、被引用回数の多い順です。


 こららの結果から言えることは、日亜化学のUSP2件の被引用回数、34回と36回は平均的なものよりもかなり多いと言うことです。

ご参考;日本特許では、下記の4件だけに引用されています。
特開平11-354456、特開平10-167897、特開平08-279468、特開平04-238890


事例U. Rambus社の特許  

 高速メモリ技術に関するRambus社の特許侵害訴訟では下記の特許が対象になっているとのことです。
US5915105 US6034918 US6324120 US6378020 US6426916 US6452863
 
 これらについて、同じやり方で被引用回数を見てみると、下記のように43回の多い特許が一件ある以外はあまり多くありません。これだけから決定的なことはいえませんが、可能性としては、US5915105が中心となり、他の特許が周辺を埋めるような役割になっているのかもしれません。