米国の景気は急速に回復か H22.8.24

 以前、私は企業の特許件数と株価の関係を調べたことがありました。その結果、概ね特許件数の多い企業は株価も高い関係にありました。(ただし、似た業種間での関係です。同じ電機業界でも、重電志向の会社と家電中心の会社とは少しずれており、2つの近似線が引けたと記憶しています。)
特許件数と株価が比例する原因として次のように考えました。
(1)特許件数の多い企業の株が買われている。
(2)技術開発が活発で特許件数が多くなり、製品が売れて株価が高くなる。
(3)企業が活発に動いているので、特許出願が多くなり、株価も高くなる。

 まず(1)は特許件数の多いことが原因で株価が上がるということです。もしそれが成り立つなら、株価を上げたければ10億円くらいかけて2,000件も出願すれば株価はぐっと上がることになります。ですから、これはありえないものと考えました。
 (2)(3)の2つは良く似ていますが、少し違う点があります。つまり、(2)はもっともな見方ですが、研究開発と製品販売には多くのステップがあり、研究開発が活発だからといって商売も上手とは限りません。これに対して(3)は、それほど進んだ研究を行なっているわけではないが企業活動が活発であり、先行投資の1つとして特許出願を行う場合もあると考えました。正確にはわからなかったのですが、たぶん(3)の見方が正しいのではないかと考えています。

 そこで、特許件数と景気という観点を横において、国ごとの特許件数をみてみました。面白い結果になりました。
 
 MicroPatent/PatSearch FullTextでUSP(米国特許)の2008年と2009年の登録件数、およびそれらと今年の1月から7月までの件数を検索し、今年の登録件数を推測しました。
下図は、2010年の1-7月のUSP登録特許を、植物特許や防衛出願などを除いて検索しています。
 

下図は件数が表示されています。
 

 下表はこの結果を示しています。2010年の年間件数の推定は下記のようにしました。
124,961*1.730=216,182件
  登録件数
1-7月(1) 1-12月(2) 比率(2)/(1) 1年の推測
2008年 93,010 158,596 1.705  -
2009 95,703 168,012 1.756  -
2010 124,961  - 仮定;1.730 216,182


 これをグラフにすると下のようになります。これだけではそれほど面白く思えないかもしれません。



 下図は同じやり方で検索した2008年と2009年の日本公開特許、および2010年の推定件数です。これを見るとかなり明らかになってきました。つまり、日本の経済状態は今年も落ち続けるのに対して、アメリカ経済は上向きに転じている(のではないか)ということです。米国の失業率などの一部の数字を見ると日本より悪いものがあります。しかし、JALの先行きは真っ暗とも一部では言われているのに、すでにGMは大幅な黒字に転じたなど、危機に対する迅速な対処法の違いをみていると、この特許件数と景気の相関も無視できないように思えてきます。


 下図は中国公開特許を加えたものです。これを見るとなおいっそう、特許件数が経済状態を表していると思えてきます。成長率に比例しているとさえ言えるかもしれません。