■■■■■メールマガジン;六車技術士事務所■■■■■  2014.4.11

■特許制度も愚弄したか?

 STAP細胞に関する小保方さんの記者会見を見ていて驚きません
でしたか?

 私が最も驚いた部分は、STAP細胞作成には「たくさんのコツや
ある種のレシピのようなものがある」という部分と、「次の研究にも
関わってくることでもあるので・・・」公表しないという部分です。

 学術論文はそれで通るかもしれませんが、特許出願にあたっては秘
密の部分があったのでは審査で拒絶され、特許にはなりません。特許
法に、普通の(平均的な)技術者が再現できるように秘密なく記載が
必要と書かれています。

 この特許はPCT出願されすでに公開されていますが、その際のア
メリカの弁理士はこれでSTAP細胞が作れると思ってまとめたはず
です。小保方さんは特許に開示した方法でSTAP細胞が作れると弁
理士を騙したことになります。

 テレビのある番組であるコメンテータが、特許の関係もあるのでコ
ツなどを秘密にしているのだろう、というような言い方をしていまし
た。しかしこれは、特許制度を間違って理解しているし、国民に特許
について間違った理解を広めるので改めて欲しいものです。

 特許法36条には「その発明の属する技術の分野における通常の知識
を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載
したものであること」が必要とされています。

 つまり、この特許には生物細胞学の平均的な知識をもつ研究者が再
現できるように、STAP細胞の作成法が開示されていないと特許審
査をパスすることはできません。これに対して小保方さんは「全てを
開示せずに特許権を取ろうとした」と公言したことになります。

 特許権は、技術を公開した人に対し、公開したことで科学技術の進
歩に貢献したご褒美として一定期間の独占権が与えられるものです。
いくら大発明であっても内容を公開せずに特許権が取れることはあり
ません。もし、審査官を言いくるめて(≒騙して)特許登録できたと
しても、その特許の権利行使の段階で、相手方から無効審判や無効訴
訟を起こされ、大変な手間と費用を掛けたあとに特許が潰れることに
なるでしょう。

 平均的な技術者が作れるように詳細を公開せずに特許権だけを取ろ
うとしたとすれば、小保方さんは「生物細胞学の歴史を愚弄している」
だけでなく、「特許制度も愚弄した」ことになります。

 悪意がなかったことはあの顔つきをみれば想像できます。しかし、
勉強不足だったとしても結果としてはそういうことになります。

 STAP細胞が存在するとしても、この部分はおかしいと思います。

 
■昔々、その11・・・    前←  ⇒次

 土曜日だったか、パルテノン神殿の近くのTABERNAの多くが休んでいます。休日は稼ぎ時だと思うのですが店の従業員も休んでしまうのでしょうか。今から思うと昨今のギリシャ経済危機の萌芽を孕んでいたのかもしれません。


※パルテノン神殿

 食事できるところを探してうろうろしていると、10代後半の日本人の男が話しかけてきました。高校が面白くなくなってヨーロッパを旅して歩いていると言うのです。生きる目的が何なのか分からないというのでしょうか。太平洋戦争が終わって33年のあの時代にヨーロッパ自由旅行に出してもらえる環境の恵まれた人だったのでしょう。

 しかし、働く、つまり組織内で求められていることをコナシて食を得ることが実感できないというのは、裕福ではあっても恵まれた環境かどうかよく分かりません。自分で自分の身を守ることを忘れた人間は独立した人間なのでしょうか。とはいうものの、新しい時代を切り開くことがら、特に文化的なものごとは、そのような恵まれた環境でこそ生まれるものがあるとも言います。

 そういえば、今回の出張は自分にとって大変いい機会であったわけですが、それを特許情報にどのように生かせば良いのかなどと考えていました。

 さて、次はトルコのイスタンブールへ4回目になる飛行機に乗って移動しました。ギリシャからトルコはひとっ飛びの近さでした。ところが着いたのは夜の8時頃ではなかったかと思います。

 空港の入国手続きで並んでいると、大柄な女性がサングラスを大きな髪の上に乗せ、豹か何かの柄の毛皮をひらめかせて、肩をいからしてとカツカツと歩いてきました。見ると、茶色系統の肌に化粧は色濃く、眉は吊り上げ、一見するだけで尋常な人ではないかと思わせます。こりゃ目を合わせない方が良い人種だなと思っていると、ビューと風を巻き起こして私の横を通り過ぎ、列の先頭に近づいていきます。

 その先頭を突き飛ばすようにしてゲートの中に入りました。入国管理の役人を睨みつけるようにしてボソボソと何やら話してそのまま行ってしまいました。どう見ても役人には見えないし、目立ち過ぎて秘密警察のような人とも思えません。もちろん売店の売り子さんとは全く似つかわしくありません。ヤーさん系統だったのかなと思いまいしたが、簡単に入国させてしまって良かったのか。どういう立場の人だったのでしょうか。

 ホテルは高台地区にある見晴らしの良いインターコンチネンタルホテルでした。なお、ホテルは旅行中どこもほぼすべてがツインの部屋で、広々としていました。私には、モッタイナイという感じばかりしていました。

 ホテルのある整然とした西欧ふうの一角を外れると、古いトルコを彷彿とさせるような、賑やかな入り組んだ路地が続いていました。特許事務所はその中のある建物の2階にありました。

 コーヒーを注文しれくれましたが、しばらくして独特のお盆のようなものに乗せて配達されてきました。

 コーヒーがヨーロッパに広がったのは、実はトルコからなんですね。
450年くらい前のことだそうです。そのトルココーヒーの容器は直径4,5cm程度の縦長の金属製で、細めな鶏卵の程度のもので2,3口飲むと終わりです。それを、直径30cmあまりの丸い金属のお盆に3,4個乗っけて、そのお盆の四方に長さ40cmあまりの鎖が付いており、その鎖の上を握って、ぶらぶらと下げて配達してきます。このスタイルは一般的らしくあちこちで見かけました。

 最初に飲んだコーヒーはかなり強かったので驚いていましたら、その後はやや薄いのが出てくるようになりました。量が少ないので、何度も頼むことになりました。

 60歳代の所長と30歳代の息子が中心メンバーでやっていました。所長は切手収集が趣味で、今はナンとかという特殊なものが欲しいのだと教えてくれました。

 30歳代の2代目は、小柄で丸顔で、顔色は濃く、眉は太い人でした。夕食に同行した奥さんはイタリア人とのこと。小柄で吸いこまれそうな青い目の美人でした。夕食に誘われたとき、小さなテーブルだったので目の前にその奥さんの青い目があり、あんな近くで碧眼をまじまじと見たのは、あとにも先にもあの時だけでした。

 海の近くのレストランに行こうと30代の2代目が連れて行ったのですが道路は混雑していました。渋滞している道路で車線変更する場合など、前や隣の車と擦りあわんばかりのギリギリのところまで寄せて、器用に運転します。

その何十年かたった後のことですが、欧米人はアジア人よりも空間認識力が高いと聞いたことがあります。そのようなとき、あの運転の旨さを思い出してトルコ人は欧米人の血を引いているんだなと思うことがあります。あるいは逆で、トルコを通ってヨーロッパに散らばって行った人達が何かの必要で空間認識力の高い人だけが生き残っていったのかも。

 特許庁はイスタンブールにはなくて首都のアンカラにあります。そこでまた飛行機に乗って出掛けることになりました。このフライトは最初の日程には入っていなかったので現地で切符を買うことになりました。

 これまでのフライトは、全て日本で事前に購入していた通りだったので何か気楽でした。ところが、今回は初めての経験で、しかも飛行機は飛んでいるとき変な振動やガタガタと音がしたりして緊張しました。何事もなく無事300km程度離れたアンカラ空港に到着できました。

 空港からはタクシーで市内に移動しましたが茶色のはげ山が多く、雪解け水がぐちゃぐちゃになっている風景があったりして、寒々とした印象でした。

 特許庁の入っているビルの前ではターバンのようなものを巻いたり独特の帽子を被った2,30人の人が集まってワイワイガヤガヤと騒がしくしていました。労働者の職探しの機関でもあったのか、特許を早く認可しろと騒いでいたのだったか良く分かりません。
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