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■ワード、エクセルそっくりさんの中国製のソフト

 KingSoftという中国の会社から、マイクロソフト社のワード、
エクセルによく似たワープロソフトと表計算ソフトが販売されて
います。価格は非常に安価で、わずか1/5くらいです。

 全体の名前はキングソフトオフィスとか、オフィス2010などと
言い、各ソフトはWriter2010とかSpreadSheet2010などと言います。

 内容は、例えばWriterでいえば、ファイルを開く、保存する、
文字を入力する、コピーし張りつけるなどの編集など、また拡張
子はdocやdocxなどであり、かなりMS社のワードと似ています。
そっくりさんです。
これは知的財産侵害として訴えられそうな気がします。しかし、
MS社からそのような動きはないようです。

 冷静に考えてみると、ワード、エクセルの何が知的財産の対象
なのかよく分からない、と思いませんか?

 ファイルを開く、文字をコピーする、アイコンで操作するなど
は公知のはずです。ツールバーとかプルダウンメニューなども公
知のはずです。

 それらをまとめたものに価値があるかもしれませんが、MS社
は最初のうちはほとんど特許出願をしていませんからワードなど
に関する特許はほとんどないでしょう。また、もし特許を取って
いたとしても、既に20年は経過しているはずです。

   オフィス2010などは商標登録されていれば、まずいと
   思いますが・・・

 MS社の商売がうまくいっているから、それを真似たものを作
るのは悪いことでしょうか?

   悪いと言えば、医薬品でテレビでも宣伝しているゼネ
   リック医薬品、特許の切れた製法で製作した医薬品も
   悪いことになってしまいます。

   また、自動車やパソコンも各社が独自製品ばかり作っ
   ていたのでは標準化されずに大変なことだったでしょう。

   パソコンの神様のように言われるアップル社の故ステ
   ィーブ・ジョブズはマウスを自社のPCにいち早く取
   り込んだのですが、マウス自体はアップルとは関係の
   ないダグラス・エンゲルバート氏が1967年に特許出願
   し1970年に登録されたものでした。
   ワープロやマルチウィンドウもダグラス氏の発明とさ
   れています。

   なお、アップルが実際に使ったマウスの中の構造はS
   RIなどで改良されたものでダグラス氏のものとは異
   なったようです。

 良い悪いは別として、ワードやエクセルは既に業界標準と言っ
ていいでしょう。乗用車にゴムのタイヤが4本付いていること、
ブレーキペダルが左にあり、右にアクセルペダルが付いているこ
と同じです。

 さて、KingSoft社のワードそっくりさんのことですが、もし作
って悪くないのなら、なぜ日本では作られず、中国では作られる
のでしょうか?

 大手ソフト会社では人件費が高いかもしれませんが、仕事がな
くて困っている人も大勢いるはずです。

 なお、KingSoft社のこれらのソフトには、バグや使い難い点が
まだたくさんあります。日本人のきめ細やかさでそのような点の
ないものを作ってほしいものです。

★特許権も切れて一般知識化した技術を使って便利な製品を作っ
 ていくことは、近代的な特許制度の目標ともいえます。
 そのために、特許出願では「平均的な技術者が分かるように記
 載する」必要があり、公報を発行し、(少し使い難いものの)
 IPDLという無料データベースを整備して知識を広める活動をし
 ています。

   明治時代の政府関係者は、欧米先進国からバカにされな
   いように、戦争するに当たっても律儀なほどに国際法を
   守ったということが「坂の上の雲」だったか何かの本に
   書かれていました。それは立派な態度だと思います。

 法律遵守は大切なことです。しかしそれを不必要に拡大して、
人がやった後でないとやらないような、少しでも危うものには一
歩も近寄らない態度は、
便利で安価なものを提供すべき技術者としては間違っていると思
います。

 日本社会や産業界の閉塞感を政治に求め、また円高や高い人件
費に求めるのは簡単ですが、我々でやれることをやっているので
しょうか?
もう少し自由な発想でビジネスの展開をしていきたいものです。

 *** がんばれ、日本 ***

※中国に関して巷で言われるコピー体質を擁護するのがこの記事
 の目的ではありません。ご理解ください。


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