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■「発明」と言う言葉は?

 司馬遼太郎の江戸末期を描いた小説(※)で登場人物に「発明」と言わせていま
した。司馬さんのことだから何かの資料に「発明」という言葉を書いてあったのを
見て使ったのだろうと思っています。

  ※その小説は、私の記憶違いでなければ江戸末期の北前船
   で活躍した高田屋嘉兵衛(1769-1827年)の物語を描いた
   傑作「菜の花の沖」です。

 一方、広辞苑で「発明」を見てみると、江戸時代に生きた向井去来(1651-1704
年)という人が文書に書いているとして紹介しています。去来は俳句の芭蕉の高弟
です。京都は嵯峨小倉山にあった落柿舎(らくししゃ)は彼の別荘で、芭蕉が逗留
して嵯峨日記を書いたとのことです。彼の「去来抄」という本に「不易流行の句は
古説にや、先師の発明にや。去来曰、不易流行は万事にわたる也(なり)。」と
「発明」が書かれているそうです。

1600年代の最後の頃に使われた記録があると言うことは、それより少し前から使わ
れていた可能性があるので、ひょっとすると徳川家康(1542-1616)なども耳にし
ていたかもしれませんね。

■私は最近、面白い仕事をしました。それは特許明細書中に発明者が自分の発明の
優位を説明するために引用する特許番号、つまり発明者引用特許の抽出です。

 特開平8-123などと綺麗に書いてあるものもありますが、めちゃくちゃな書き方
をする場合も多く、それらを標準的な番号として抽出するものです。面白かったの
は特開60-123などというものを、これは昭和しかありえないから特開昭60-123だと
プログラムを作るところでした。

では特平9-123とあったらこれは下記のどれが正しいでしょうか?
 (1)特開平9-123と断定できる
 (2)特公平9-123もありうる

 公告制度は平成8年3月29日をもって発行終了し、平成8年5月29日から登録後の特
許公報が発行されました。したがって、(2)はありえませんので、(1)が正しい、つま
り特開平9-123と断定できます。

 では、特平8-123の場合はどうでしょうか?

 平成8年の3月29日までは特許公告公報が発行されましたので、上の例では特開
平8-123か特公平8-123か分かりません。これは判断できません。つまり上の番号の
場合は引用特許番号としては採用できません。

個人的には、9割がた公開公報だろうと思うのですが論理的な説明ができませんの
でダメでしょう。

これを科学技術情報協会の機関誌の7月号に「発明者引用特許の抽出とその分析」
として掲載しました。下記URLにその論文を置いています。
 http://www.patentcity.jp/patentcity/hatsumeishainyo.htm

 公開特許の平成5年123号と6年の223号・・・とか、
平成5年456号の公開特許と平成6年556号の公告特許・・・などのような
書き方の場合は人間ならすぐ分かるのですが、プログラムでは大変でした。

■過去の索引 http://www.patentcity.jp/merumaga/index.htm
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