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  リスクと付き合う   ⇒目次 ⇒六車農園

2012.1/5(木)、晴れ
【今年初めての時事放談】
 ・・・ジジー砲弾とも
 昨年後半から、放射能の危険性と生活一般の危険性を相対評価する考えが新聞にも報道されるようになってきたて、好ましく見ています。それらの主張は概ね「ひとつのリスクを下げることをし過ぎると他のリスクが高くなる」という考え方です。

 放射能は少ないほど良い、年間1mSvでも危険、0.23μSv/h(≒年間2mSv)なら除染する、挙句の果ては「リスクはゼロを求めるべきだ」などの主張があります。

 ところが、交通事故のリスクをゼロにしようとすると、車の速度は時速5km程度にしたり、歩行者は道路わきを歩くことはできません。発ガンのリスクをゼロにしようとすると、食べ物は何も食べられなくなりそうでし、ひょっとすると呼吸して酸素を吸うことも危なくてできないかもしれません、笑い話のようですが。
 煙草を吸うことは年間1,000mSv程度と同じ発ガン率(吸わない人の1.5倍)だそうですし、吸う人の近くに寄ることも危険でしょう。

 このようにリスクゼロはできないものであり、便利さとの取引である程度のリスクは許容する、納得することが大切なようです。原発事故による放射能汚染は起きない方が良いに決まっています。しかし、起きてしまった現時点で考えると、どの程度までは許せるか良く考えることが大事だと思います。

 飛行機のパイロットやフライトアテンダントの方はだいぶ多く被曝しているようです。成田−ニューヨーク間で片道11時間程度で20μSv程度。往復25時間で40μSv程度。ただしこの値は、中性子成分による被曝線量の測定はなされていないので、それを含めると2.7倍すると実際の値になるそうです。このため、年間で800時間飛ぶ人は次のように3.5mSv程度になるようです。
 40μSv/25h*2.7*800≒3.5mSv

 3.5mSvを1時間平均に直すと、0.39μSv/hです。しかし、フライトアテンダントの癌の罹患率が高いとは聞いたことがありません。

 日本は世界の中でも放射能が低い地域であり年間1.5mSv程度、欧米は2.5mSv程度だそうです。もし、年間4mSvまで許すとすれが1時間当たりならば0.45μSv/hに、年間3mSvなら1時間当たり0.34μSv/hなります。このあたりまでは問題ないと考えるのが妥当なように思えます。


 年間50mSv程度以下の微量放射線の影響については、
@人体への影響は比例して低下する、
A比例以上に低下する、
B比例して低下しないので危険が大きい、
という考えの3つがあるそうですが、専門家でも意見が分かれているそうです。ですので、私が意見を言っても良かろうと思って、以下書きます。

 私は、A比例以上に低下するので影響は無視できると考えます。なぜなら、紫外線も当たり過ぎると皮膚がんを起こしますが、適度に当たっても自然回復の範囲内です。それどころか、紫外線に当たらないとビタミンDが合成できず人体にとって危険なことになります。なぜ紫外線に適度に当たることが妥当なのかというと、人類はそのような環境で育ってきたので、それに適応できるようになっているものと思います。

 放射線も欧米では年間2.5mSv程度受ける環境で長い間育ってきているのでその程度のことは何も問題ないと思います。年間50mSvというのはその20倍になりますので2.5mSvよりは影響はあるでしょうから、50mSvが安全と言うわけではありません。しかし、50mSv程度以下であれば比例して減少するよりもさらに影響は少なくなると私は考える、ということです。

 しかし、紫外線やタバコの煙、または運動不足や野菜不足などに敏感に反応してガンになり易い人もいるでしょうし、子供には影響が大きいこともあるでしょうから、他の危険とバランスが取れる限り、少ない方が好ましいとはいえるでしょう。年間2mSv(≒0.23μSv/h)でないと安心できないと言って、外で運動しない・させないとか野菜を食べないとか、また心配で夜も眠れないなどは別のリスクを引き起こすという意味で極端ではないかと思います。

 原子力発電のこと。放射能が心配でいま原発を全部やめれば、日本のエネルギーは安定できなくなり、産業の国際競争力を大きく損ねます。もちろん家庭生活も影響を受けるでしょう。火力発電だけでは当然CO2削減にも大きな影響があるはずです。石油価格も高騰するはずです。

 2011年夏は火力発電で乗り切れたではないかと言う人もいますが、それは余力を使いきっての綱渡りだから何とかもっただけのことです。余裕が必要です。いつどんな緊急事態が発生するか分かりません。

 空中の放射線による外部被曝も食べ物の中の放射線による内部被曝も、福島県などの強い地域以外は、あまり気にする必要はない模様です。肥満や喫煙がはるかに危険です。

 国や市の基準では0.23μSv/h(≒年間2mSv)以上の土は除染すると言っていますが、必要ないように私には思えます。0.5〜1μSv/h程度(≒年間4.4〜8.7mSv)程度以上で十分な気がします。むやみに除染作業をして子供を外で遊ばせず室内でケンカしてケガするとか、特殊な作業をして交通事故や排気ガスを撒き散らす方が、もっと直接的で危ない気がします。

 昨年3.11までは、CO2削減・地球温暖化対策があまりに声高に語られており、いき過ぎだなと感じることがありました。知人にそう言うと非国民扱いされる雰囲気がありました。いま原発の必要性を言うと同じく非国民扱いされそうです。しかし、太陽光発電や風力ではとても足りるものではなく、石油は燃やしてしまうにはもったいない資源のはずですし、CO2削減・地球温暖化対策も必要です。

 あと10年もすればもう少し太陽光発電の効率が良くなり、設置費用も劇的に安くなるかも。そうすれば原発が不要とか半分くらいで良い日が来るかもしれません。私もそうなることを強く願っています。

 10年くらいかけて脱原子力のできる方策を探ってほしいものです。そのためにも、政府はエネルギーを確保して健全な産業を育成し、税収を増やし、研究開発投資のリードをしてほしいものです。原発事故は怖かった、だから原発の即時放棄というだけでは何も生まれないと私は考えます。

 原子力は怖いものです。大量の有害な放射性廃棄物を何十万年など気が遠くなるほどの間も隔離して管理が必要と聞くと、まともな技術とは思えません。

 だから、今しばらくは電気料金を安くしろとあまり電力会社を責めず、安全のための投資を電力会社に実施してもらうことが大切と思います。これは電力会社を擁護しているのではありません、誤解されませんように。一方、利用者は「もったいない」という気持ちを持って無駄を防いで上手に使っていくことが大切と思います。

 国民世論の電気料金の安価願望に合わせたのだとしても、多くの国民を塗炭の苦しみに追い込み、有効に使える狭い国土をさらに狭くするような事故を起こした、安全性を無視したプラント運営の意思決定をおこなった電力会社幹部は責任を取るべきと思います。


  

 

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